Campus Life & Career 早期からの伴走で学生の「主活力」を育てる―東洋大学の就職・キャリア支援

就職活動の早期化や、何事も「失敗したくない」と考える学生たちの増加――進路選択を取り巻く環境が変わるなか、大学のキャリア支援担当者はどのような考えを持って学生たちを導いているのだろうか。東洋大学就職・キャリア支援部長の前田孝さんに、当学のキャリア支援の理念である「主活力(しゅかつりょく)」に込めた思いや、実践するプログラムなどについて聞いた(写真は、就職・キャリア支援室を訪ねる横岡小夏さん=後述)。
◆自ら選択し、行動できる社会人を目指す
大学に寄せられる求人情報は、毎年約5万件。2025年度卒業生の就職率は全学部合わせて98.5%(※)と、東洋大学は就職においても余すところなく強さを発揮している。この東洋大学の就職・キャリア支援を象徴する言葉が、「主活力」である。
(※)出典:東洋大学教育情報公開「就職データ・就職状況」(2026年3月)/2025年3月、第1部卒業者数5982人。就職者(4968人)÷就職希望者(5046人)≒98.5%
「『主活力』とは、主体的に活動できる力、つまり、自分の人生を自分で決めることができる力のことです。就職活動を乗り切る小手先のテクニックではなく、学生が自分の足で立ち、選択し、行動できる、そういう力を身に付けてほしいという願いを込めています」と、就職・キャリア支援部長の前田孝さんは言う(以下、同)。

「主活力」という言葉を考案した就職・キャリア支援部長の前田孝さん
「主活力」の発想は、東洋大学の建学の精神と重なる、と前田さんは言う。創立者である哲学者・井上円了(いのうえ・えんりょう)の言葉にある「さまざまな課題に主体的に取り組む」という姿勢、そして「諸学の基礎は哲学にあり」という考え方は、変化が激しく正解がない現代においてこそ、キャリア形成の土台になるという見立てだ。
「答えのない問いに直面したとき、他人の考えに流されるのではなく、思考をめぐらせて解決の糸口を見いだす。そうした“哲学する姿勢”は、キャリア形成にも生かすことができます。我々の支援のゴールは、就職率などの数値目標の達成ではありません。学生には、小さな成功体験を積み重ねながら、『自分はできるんだ』という自信を持って卒業してもらいたい。そして、その自信を原動力にして、社会で羽ばたいてほしい。それこそが東洋大学のキャリア支援が目指すところです」
Z世代の若者はとかく失敗を恐れ、「自分はこの程度」と自分の可能性にふたをする傾向があると言われる。その殻を破って自信を育てるため、キャリア支援では、「寄り添い」「気づかせ」「つなげる」というステップを大切にしているという。
「まず、学生の中にある不安を否定せず、徹底的に向き合って対話します。そして、対話の中で本人が自覚していない強みを見つけ出し、『それは実はすごいことなんだよ』と気づいてもらう。そのうえで、その強みが発揮できる業界、企業につなげていくわけです。内定を“取る”こと自体よりも、自分の力を生かせるフィールドを示すことで、学生は自信をもって社会に踏み出すことができると考えています」
こうした対話の場となっているのが、キャリアセンター(就職・キャリア支援室)だ。キャリアセンターは白山、赤羽台、川越、朝霞の各キャンパスに設置されている。例えば白山キャンパスにはパーテーションで仕切られた相談ブースが10小間、オンライン面接などにも対応できる個室防音ブースが6小間設置され、その充実ぶりは目を見張る。学生は自己分析や業界・企業選び、履歴書やエントリーシートの作成、面接の仕方などのサポートを受ける。また、学生は相性のよい相談員を“指名”することもでき、数年にわたって同じ相談員が“伴走”するケースもあるという。

白山キャンパスの就職・キャリア支援室。広く、機能的で、有用な情報が満載だ
◆早期からのサポートで、徐々に自立を目指す
近年は就職活動の早期化傾向が顕著になり、それに戸惑う大学生、保護者は多い。「気づいたら希望企業のエントリー期間が終了していた」「内定を取ろうと焦り、自分に合ったキャリアについてじっくりと考える時間がなかった」といった声に対応できるよう、1、2年次から就職・キャリア形成に関する情報やプログラムを提供している。

図表提供:東洋大学
その一つが、1年次から段階を踏んでキャリア形成を目指す「UP講座」だ。「将来に向けて何から始めればよいかわからない」という不安な学生を対象に、丁寧に学生を導いていく。
「不安なのはみんな一緒ですから、その不安を一つひとつ解きほぐしていくことから始めます。例えばエントリーシートの作成であれば、学生生活を充実させていくことで書ける内容が増える、だからまずは興味の幅を広げるための行動が大切、といったことを伝えています。よりよいキャリアは、結局のところ大学生活をどう充実させるか、というところにつながるわけですからね」
早期から自身のキャリアを意識させることで、教室での学びはもちろん、課外活動やインターンシップも意味あるものとして位置付けていく。不確実な時代だからこそ、多様な経験を「総合知」として自分の中に結実させ、自分で判断する力を養う。こうした働きかけを通じて、学生たちは少しずつキャリア形成に向けて自走するようになるという。
◆豊富な企業との接点も魅力
早期から企業・社会との接点を豊富に設けていることも、東洋大学の就職・キャリア支援の特徴だ。企業連携の取り組みとしては、 学年・学部を問わず参加できる課題解決型のプログラムを実施。加えて、卒業生をロールモデルとして、その働き方やキャリア観を学生に学んでもらうプログラムも進めている。
「とくに企業との課題解決型プログラムは、社会への視野を広げ、自分の強みや日々の学びの意味に気づくきっかけとなっています。企業の皆さんにご協力いただきながら、今後はさらにその機会を増やしていきたいと思っています」
東洋大学内の就職情報ナビサイト「TO YOU」には5万件以上の求人情報のほか、キャリア支援講座の案内や卒業生の体験談なども掲載され、キャリア形成のよい羅針盤となっている。企業の情報収集にあたっては、就職・キャリア支援部の「求人開拓チーム」の働きが大きい。BtoBを中心に企業を一つひとつ訪ね、「東洋大学の卒業生は、組織で粘り強くがんばる力がある」「東洋大生を採用したいが、エントリーが少ない」などの現場の声を吸い上げ、学生に届けている。さらに、2025年からは起業家育成プロジェクトも試験的にスタートした。起業に限らず、「新しい価値を生み出す力」の養成を目的としたプログラムだ。
「アントレプレナーシップは“起業家精神”と訳されがちですが、起業するしないに関わらず、これからの社会に欠かせない力と考えています。新しい価値を生み出す力を養えば、ベンチャー企業であれ、大手企業であれ、どこででも働くことができる、という考えで始めました」
今の学生たちは、デジタルネイティブとして情報収集能力が高い。その一方、情報過多の中で正解が見えずに疲弊する“情報難民”も多い。最短距離で答えを求め、失敗を恐れる傾向があるからこそ、東洋大学の就職・キャリア支援部では、学生への動機付けを丁寧に行い、納得感を得ながら一歩一歩前進できるよう、さまざまに工夫している。
「特別なスキルを修得しようと焦る必要はありません。それよりも、『これ、好きだな』という自分の感覚を大切にしてほしい。『ほかの誰かが決めたから正解』ではなくて、自分で考える癖をつける。それが大学選びにも、その先のキャリアにもつながっていくはずです」
就職活動に取り組んだ学生に聞きました――
◆「キャリア支援を受けて、学び方が積極的になりました」~国際観光学部 国際観光学科4年・横岡小夏さん

私がキャリアについて真剣に考えるようになったのは、1年生の秋に受けた「キャリアデザイン」の授業がきっかけです。同級生や先輩方と意見交換しながら、これからの4年間をどう過ごしたいか、将来どうなりたいかを考える内容で、就職活動を前向きにイメージできるようになりました。
続いて、2年次に上がる直前に参加したのが、キャリア支援講座のひとつ「UP講座」です。就職活動全体のスケジュール感から、エントリーシートの書き方、自己PRの組み立て方まで具体的に学ぶもので、学年が上がるごとに内容が詳細になっていくので、「今はこれをやる時期なんだ」と把握でき、とても役に立ちました。受講する学生は就職に対して真剣な人が多く、すごく刺激を受けましたね。
「自分が就職活動でアピールできるものは何だろう」と焦る人がいますが、私の場合、「就職活動のために」というより、やってみたいことをとにかくやるという考え方でした。そうして、ボランティアやマレーシア留学、アルバイト、ゼミなどを通じ、徐々に将来像の解像度が高まり、自己PRにつながる体験も増えていったという感じです。
ただ、就職活動が本格化した3年次の夏は、企業に提出したエントリーシートがなかなか通らず、かなり焦りました。そこで頼りにしたのが、就職・キャリア支援室です。「UP講座」でお世話になった相談員の方に、何度も面談を受けました。エントリーシートを添削してもらい、「内容をもっと具体的に、簡潔に書いたほうがいい」といったアドバイスをいただくうちに、自分が伝えたいこと、目指すものが整理されていきました。その結果、秋以降は就職活動を順調に進めることができました。
東洋大学の就職・キャリア支援で一番の強みだと思うのは、「自分が動けば、自分に合うサポートが見つかる」ということです。就活関連イベントも豊富ですし、キャリア面談では同じ相談員に何度も話を聞いてもらうことができます。さまざまなタイプの職員や相談員が多数いらっしゃるので、自分に合う人を見つけられる可能性が高いこともいいところだと感じました。周りの友だちからも「就職・キャリア支援室に行って本当に良かった」という声を聞いています。
私自身、キャリア支援を受けたことで、大人の方やさまざまな方に積極的に関われるようになるなど、就職活動以外の面でも成長できました。授業もただ座って聞くのではなく、質問してみたり、ゼミでも先生に助言を求めたり、学び方が積極的になったように思います。この姿勢は社会人になってからも大切にしたいと思います。就職先のJALUXでは、航空会社の関連企業ならではのネットワークを生かし、日本の良いものを世界に広められるような商品開発に携わってみたいと考えています。
掲載日2026/03/12